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2022.11.17

NEW ENERGY特別賞受賞 大石龍弥×渡邊睦 スペシャル対談vol.2 【NEW ENERGY TOKYO 9月の出展を終えて】

 去る9月に開催されたNEW ENERGYへの出展を終え、大石氏の見つめる未来は?NEW ENERGYのコンセプター兼クリエイティブディレクターの渡邊が描く「出会いをクリエイトする」こと、とは?それぞれのアプローチからクリエイトする事を探求する二人が語り合う。NEW ENERGY特別賞受賞大石龍弥氏と渡邊睦の特別対談・第二弾をお届けします。
※以下対談中、話者の敬称は省略させて頂きます。


渡邊)早速ですが、9月に開催されたNEW ENERGYに参加されて、率直にどうでしたか?

大石)参加して1番に感じたのは「会場全体がコンテンポラリーアートのようだ」という事でした。
出展ブランドそれぞれが、オブジェのような存在感を放ち、パフォーミングでは、まるでオブジェが動き出したかのようでした。様々なメッセージを放つブランドが集結し、無秩序なようでどこか品格を感じる、そんな世界が広がっていたと思います。ご紹介いただいたKAIKA 東京 by the share hotels(注:今回ご協賛頂いたホテルです)に宿泊したんですが、ここでもコンテンポラリーアートを推奨していて、NEW ENERGYとの親和性を強く感じる事ができました。また、作品の説明ボードの下に設置頂いたQRコードは、興味を持った人達がすばやく情報を得られるキャッチーな仕掛けで、非常にポジティブなツールだと思いました。それもあり、改めてInstagramの重要性を感じました。私を知って頂くためのツールとして、頻度やキャラクター設定など、改めて様々な角度から検証して、積極的に活用していきたいです。

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ー 常に成長し続けるデザイナーでありたい ー

渡邊) 今回、出展頂いたブランドや企業は230を超え、ある種混沌とした印象もあったと思うのですが、それを全体として捉えたときに「コンテンポラリーアート」と表現してもらえたのは、とても嬉しいです。
Instagramも大石さんらしく、戦略的な運用を考えているようですね。
前回お話をした時にも感じたんですが、衝動にかられるというよりは、常にロジカルな脳がワークする、それが大石さんの個性のように感じます。

大石) クリエイティブディレクターを担う渡邊さんも同じじゃないですか?
ディレクターは、感性だけで動かず、理性と感性のバランスが必要なのかな、と思っています。しかし、ロジックに偏りすぎない、感性を動かす余白はとても重要で、デザイナーはそこを上手くコントロールできる繊細な作業が必要だと考えています。

渡邊) 大石さんは、自分自身を成長させる目標を常において、それに向かって突き進んでいるように見えます。

大石) ありがとうございます。私は、常に成長し続けるデザイナーであることを意識しています。そうすることで自ずと周りの評価がついてくると信じているので。

ー 出会う場所をクリエイトする ー

渡邊) それでは、大石さんご自身の事も含めて、これから先をどうみていますか?

大石) これから先のファッションの流れは、無秩序な世界というか、各々が作る世界が乱立して存在し、そこにコアな熱狂が生まれる、結果その現象自体がメインストリームになっていくように想像しています。そして今回NEW ENERGYに参加し、そのムードの片鱗を感じました。トレンドの流れは20年周期だと言われていますが、今トレンドになっているY2Kスタイルの原点、ちょうど20年前にあたる2000年初頭は、本当の意味で自由度が高く、ぶっとんでいることが必須とされる時代だったという印象です。またこのムードの再来を予感しています。その頃のエナジーみたいなものをNEW ENERGYで体感できたように感じ、とても興味深かったです。とにかく、既存の展示会のイメージとは違った独自のアプローチを感じました。

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渡邊) 展示会の在り方に関しては、私もこれまでいろんな葛藤がありました。今話にあがった2000年初頭は、展示会が盛り上がっていた時代で、私が当時手掛けていた展示会も、相当な出展者と来場者を有していました。その後取り巻く環境が変わり始め、ふと『この先、展示会は必要なのか?』という疑問を抱くようになりました。そこで思い立ち、私は世界一周の旅へ出たんです(笑)。旅をする中で気づいたことは、「自分がやってきたこと、やりたいことそれは、出会う場所をクリエイトすること、なんだ」という事でした。
そういった背景もあいまって誕生したのがNEW ENERGYです。大石さんがここを感じてくれていたのなら、とてもうれしいです。
NEW ENERGYとしての考え方を追求する、その意味では、まだまだ鍛錬が必要と感じています。大石さんのような思考力を持つ方を巻き込みつつ、広さではなく、深さを追求し、常に進化していきたいと思っています。

大石) 今回参加させて頂いて、いろんな事がフィットした感覚があって、とても楽しかったです。私自身も、しっかり未来予測をしながら、完成度をあげていきたい、明後日の方向だとしても構わず、しっかり飛んでいきたいと思いました。

計算できない状況も楽しめる余白を作る

渡邊) 現時点で、現実的なところも含めて、どういう道のりで自身の未来像に近づいていくかを聞いてみたいな。

大石) 今後、2000年初頭に活躍したアレクサンダー・マックイーンとか、ジョン・ガリアーノのような、中毒性を持って人を熱狂させるクリエイターが評価される時代になるのではないか?というイメージがあります。
なので、あまり頭でっかちにならず、感性や衝動で動く余白を持っていたいな、と考えています。
私はイタリアに留学していたこともあり、将来的にはやはり、パリやミラノで活躍したいと思っていますが、正規のルートで辿り着くことにはリスクも多いと考えているので、自分なりのルートを手繰り寄せたいと画策しています。ダークホースみたいな立ち位置だったのに、いつのまにかメインストリームに立っている、そんなイメージです(笑)

渡邊) 今、ようやく海外の行き来ができるようになりましたが、早く現地に身をおきたい、みたいな焦りはない?

大石) 焦りはありますよ!(笑) ただ、滞在経験があるので、現地のメリットとデメリット、日本のそれは、ある程度想像できているので、身を置くタイミングは悩むところでもあります。素材の調達や工場探しなど、モノづくりをするという観点では、日本の方が整備されている印象で、人脈づくりを考えると圧倒的にパリ、ミラノ、という感じですね。これ、どちらも重要なので、とにかく様々な構想を練ってタイミングを狙っている、そんな状況です。いつも考えるのは、正規のルートで有名メゾンの門戸を叩き、その後は慣習にならって地道な安定を得るか、一か八か、で自分なりのスタイルを持って攻めていくか、という事なんですが…。結果私は後者を選ぶ気がします(笑)

渡邊) なんだか、構築的に一か八かをやってるイメージだね(笑)。その方法があったか!そんな衝撃を受ける。ほんとうに面白いよね。

大石) 私的には、一か八かに備えて、戦略を練ること、計算することはとても重要なんです。ただ、計画ばかりが先行するとダメで、計算できない状況も楽しめる余白を作れるように意識しています。

渡邊) 大石さんのその情熱的な部分と、冷静な視点でロジカルな思考を動かす感じ、どちらの要素が自分の中で強いと感じる?

大石氏提供ビジュアル

大石) 私は、いつも繊細な世界に身を置きたいと考えているんです。どっちかに偏ると、どこか大雑把になるような気がしていて。どうしたらその繊細な世界を保つことができるか?と考えた時、両方を俯瞰することだと気が付きました。何かに没頭すると、周りが見れなくなっている感じが、嫌なんです。私にとって繊細な世界は、情熱的な世界と冷静な世界の真ん中にあると思っていて、そこに身をおくことが一番心地良いな、と感じています。まさに、小説「情熱と冷静のあいだ」です(笑)。

以前ミラノに居た際にレオナルド・ダ・ヴィンチの絵に出合い、遠近法を駆使して緻密に描かれた創作スタイルに、すごく共感しました。数式の上に、創造を積み上げていくイメージです。感情と理性を行き来しながら、長く走り続けたいと思っています。衝動に駆られて動くと、その反動での落差も激しく、維持することが難しくなる。それよりも私は、長期的にクリエイションを続けられる事が大事だと考えています。

渡邊) なるほど、なかなか面白い発想。大石さんを形成する考え方、という事だね。

しかし、熟考しながら、現実的に手も動かし具現化していることは素晴らしいと思う。

実力や成功を手に入れるには、努力や鍛錬は不可避

大石) 私は幼少期から陸上や剣道など、スポーツをする環境に身をおいていました。ここで学んだことがあるんです。スポーツって、身体に向き合い、練習をしますが、頭で考えてる以上に、思い通りに体を動かす事は難しい。記録が出せる体を目指し、日々の鍛錬で作り上げているつもりなんですが、動かせないんです。その現実を前に、練習という努力を重ね続ける世界です。そこには、運で手に入れた!みたいなものはなく、弛まぬ努力で手に入れるしかない。だから、実力や成功を手に入れるには、努力や鍛錬は不可避だ、という覚悟のような感覚が備わっているように感じます。だから、具現化する力が強いのかも知れません。

渡邊) やはり、その精神力が具現化に導いているんだろうね。すごい!お話してると、大石さんはこれから先どこまで走り続けるんだろう、それをずっと見ていたいと思う。ますます興味が沸きました。これからもぜひ追いかけさせて下さい(笑)

大石) 世界に向かって動きたいので、色々考えているんですが、現状、様々な障壁があるのも事実なので、自分たちの時代を創れるよう、しっかり世間に目を向け、観察しつつ、時期逃さず飛び出していきたいと思っています。

渡邊) 我々も、応援するというスタンスではないな…そう、一緒に走っていくイメージかな。仲間として。

大石) ぜひ、仲間として!宜しくお願いします。


Profile

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渡邊睦:NEW ENERGY コンセプター兼 クリエイティブディレクター

2002 年に渡仏し、帰国後に 合同展 rooms を設立。 2009 年「繊研賞」、2011 年「毎日ファッション大賞 内 鯨岡阿美子賞」を受賞。 2022 年に独立し、Blue Marble を旗揚げ。

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大石龍弥:第96回装苑賞 NEW ENERGY特別賞受賞

小井手学園小井手ファッションビューティ専門学校卒業後、渡伊。ISTITUTO MARANGONI MILANO卒業後、ミラノファッション協会サポートの元ミラノコレクションのオンスケジュールでコレクションデビュー。


「若い才能を発見し、世に送り出す」 それが装苑賞の精神です。 装苑賞は、昭和 31 年に、日本で初めてのファッション界の新人賞として創設されました。この賞は 戦後いち早く、デザインの重要性と、新人デザイナーの才能の芽を育てることの必要性を感じた先達の知恵から生まれました。その後 60 年以上の永きにわたり、多くの審査員の先生方の御協力を得て94 名の受賞者を世に送り出してまいりました。


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