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2022.12.26

インナーウェア × グラフィックデザインで鮮烈なアート体験を提案する《UNDERXCORE》。ビビットでポップなプロダクトに託されたファッション/アートの垣根を払う大胆なメッセージとは 【後編】

 ファッションとは身体に纏い、自分自身を表現するもの。アートとは、外側から観賞するもの――香港と日本を拠点とするブランド《UNDERXCORE》は、そんな「当たり前」の概念を、まったく新しい形で覆そうとする。2017年にインナーウェアブランドとしてスタートした《UNDERXCORE》のプロダクトはいずれも、ビビットな色使いと大胆に配置されたグラフィックの組み合わせが鮮烈な印象を残す。何よりも興味深いのは、インナーウェアという、普段の生活では他人の目に触れることのないアイテムをブランドの根幹に置いている、ということだ。ブランドサイトを見ると、他にもソックスや、スイムウェアや室内履き(スリッパ)など、すべてのアイテムが身体に直接的に接面していることに気付く。 

もっとも自身と親密な関係性を持つファッションアイテムとしてのインナーウェア。そこにグラフィックが配置されたとき、アートは身体性を獲得する。と同時に、身体は自身をキャンパスとしてアートをフィジカルに体験する。アートと身体性、双方向の関係性をまったく新しい、自由な視点でとらえ直そうというこの試みは、ファッション/アートへの能動性を取り戻そうという宣言と言い換えることが出来るかもしれない。 

香港、アメリカ、日本という異なる文化環境の中での体験から、自分自身とアートの関係性を見つめ続けてきた《UNDERXCORE》デザイナー、BARRY KAN氏に話を聞いた。 

【前編】はこちら


香港の新しい息吹を世界に発信する プラットフォーム《SMILE CODE》 

イチロー) 97年の返還依頼、香港は大きく変化をしてきました。近年では政治的なトピック、特に報道や言論の自由、表現の自由に対する規制が厳しくなっている、というニュースを聞く機会が多くなりました。 

BARRY) そうですね。 

イチロー) そういった状況の中で《UNDERXCORE》というブランドを立ち上げ、維持することは特別な意味を持っているのでしょうか? 

 BARRY) 確かにこの2,3年で社会的状況は大きく変わってきています。言論の自由だけではなく、教育システムといった部分でも、97年以前とは大きく変わってきていると思います。 一方で、もともと香港という街はあまりアートや芸術に恵まれた場所ではありませんでした。香港のデザイナーと言われて誰を思い浮かべる?と聞かれても、なかなか答えにくいですよね。香港の有名人と言えば、ジャッキー・チェンかブルース・リーくらいじゃないですか(笑)。 

ただ、ここ数年の変化によって、もともと自分たちが持っていた自由が無くなった、という実感がわいてきたというか――なくなってしまったものに対して、取り戻すという気持ちが湧いてきたんですね。実際、ここ最近はブランドを立ち上げる人が増えてきています。それは、やはり自己表現に対する欲求と繋がっているのだと思います。政治的なテーマを持つブランドも多いのですが、将来的には、その作品を発表する場所はますます減っていってしまうはずです。そういった理由もあって、去年、《SMILE CODE》という新しいプロジェクトを立ち上げました。 《SMILE CODE》はプラットフォーム、ショールーム。香港のデザイナーやアーティストが作品を発表するための場所を作りたかったんです。プロダクトにするか、アートに留めるかに関わらず、自分の思ったものを表現したい、という想いを汲みたいと思ったんですね。 

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イチロー) なるほど。 

 BARRY) もともと、香港という場所はファッションマーケット(市場)自体があまり大きくありません。僕自身も、香港でブランドを立ち上げ、香港で商品を売っていただけでは成り立たないというくらい小さい規模なんです。 となると、やはり海外に発信していくことが重要になってきます。ただ、これも現実としてはなかなか難しい。香港では英語が話せる人が多いですが、だからといってすんなりと欧米への進出が上手くいくわけではありません。そう考えたときに、やはり最初に目指すのは日本ということになるんです。 これまでも常に日本のファッション業界はリードするポジションにいました。〈TOKYO Fashion Week〉も世界的に有名ですし。香港にいる私たちもそれを間近に見ていました。 

ただ、昔から言われているのは――少し失礼な言い方になるかもしれませんが――日本のマーケットは、少なからず鎖国的な一面があります。他の国と比べてハードルが高い。ブランドを立ち上げるためには、日本語が出来て、日本国内に会社があって、人脈もあって……といった具合に、なかなか条件が厳しい。勿論、日本独特のルール、文化に対する理解も必要です。 

そこで、僕が考えたのは《UNDERXCORE》で培った経験やリソースを皆にシェアする、ということでした。その場所として生まれたのが《SMILE CODE》というショールームですね。

誰かを楽しませる、笑顔にさせる。 それこそが世界共通のアートの役割り 

イチロー) 現在、《SMILE CODE》をキュレーションしていく中で、現代の香港だからこそ生まれている、相通じる何か、共通する感覚といったものはあるのでしょうか? 

BARRY) このプロジェクトに《SMILE CODE》という名前を付けたこととも繋がるかもしれません。 一般的にはアートというものはある一定の距離を感じるもの、自分の生活とは少し離れているもの、という感覚があると思うんですね。でも、どのブランドの人たちと話していても、みんな最終的には人を喜ばせるために作品を作ってるんですよね。それって、世界共通のことだと思うんです。シンプルに、人を笑顔にするために何かを作る。それは共通点の一つですね。 あと、《SMILE CODE》をキュレーションするにあたって、やはりファッションブランドを扱うことが多いのですが、全体に共通するスローガンとして『Dress code is SMILE』という言葉を掲げています。スマイル、笑顔をひとつの恰好(ファッション)として身に付ける、ということですね。 

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イチロー) なるほど、とても明快な表明ですね。 

BARRY) 《SMILE CODE》としてブランドを選ぶときの基準は、人を喜ばせるものを作るという意識を持っているか、ということだけです。 

イチロー) 最後に、《UNDERXCORE》としての今後の展開についてお聞かせください。 

BARRY) 違う分野の人たちとコラボレーションしてみたいとは思っています。例えば、建築物の壁のペインティングとか。実は、九州の大学に通っていたころ、一度やったことがあって。商店街にあるお店のシャッターをデザインするプロジェクトで、2週間かけて、お店が閉まった後にシャッターにペインティングをしました。もう十何年も前の話ですが、それを最近ふと思い出して。そういったことにもチャレンジしてみたいな、と。とにかく、最終的な形はどのようなものであれ、色々なことを試したいと思っています。 

そして、僕の作品を見たり、実際に手にした人たちに伝えたいのは、『グローバルになろう』ということです。2022年の今だと、グローバルという言葉は少し古く感じるかもしれません。ただ僕が感じるのは、言葉としては以前から知っているものだとしても、実際にグローバルを行動にうつしている人、実際に行っている人は少ないということです。《SMILE CODE》を通して、面白いことをやろうとしている人たちと手を取り合って、世界に発信していこう、楽しくやっていこう、というメッセージが伝わるといいですね。 

 


Profile

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BARRY KAN 

グラフィックデザイナー/インナーウェアデザイナー/キュレーター

Academy of Art University Media Arts専攻 卒業 香港出身 香港/名古屋在住

サンフランシスコの美術大学卒業後、大阪広告制作会社にて、ファッション関係のカタログ・パンフレット・ポスターなど、紙媒体を主としたデザインを手掛け、2009年よりフリーランスに。2016年よりライフスタイルブランド「UNDERXCORE INNERWEAR」を日本で立ち上げ、オリジナルグラフィックを落とし込んだインナーウェアやホームグッズを展開。現在日本とイギリスの百貨店やセレクトショップ、合計17店舗で取り扱い。2021年より「SMILE CODE」というキュレーションプラットフォームを設立。ファッションをはじめ、アクセサリー、バッグ、陶器、アイウェア、アロマキャンドルなどクリエターズブランドを集め、編集し日本と世界を繋ぐ。


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